キトサン関連産業別の利用効果
 
衣料
キトサンの抗菌効果
 衣料品には色々な種類の繊維が使われている。
その一つにパルプを原料とする繊維でレーヨンといい、結晶度の高いセルロースを用いた衣料原料に好適な繊維がある。
オーミケンシでは全く新しい技法を用いてキトサンをそのまま繊維化することに成功した。
この繊維は、綿、アクリルなどとも混紡することができ、多種類の加工が可能である。
もともとキトサンは繊維の染着性を向上させ、光沢など風合いをよくすることが知られているが、ここでは更にその抗菌性が加えられた。
水虫は白癬菌の寄生によって引き起こされるが、キトサンはその増殖を抑制することができる。
また、靴下のいやな匂いは、足の肌からの分泌物に色々の腐敗細菌などが増殖した結果生じるが、キトサンはこのような腐敗細菌の増殖をも防いでくれる。
キトサン含有繊維の抗菌効果は、黄色ブドウ球菌を指標とする検定法によれぱ、50回の洗濯後でもなお90%以上の値を示した。
よってキトサンを配合した繊維で作った衣類、靴下、タオルなど、直接肌に接触するものをはじめ多くの製品で、長期にわたる持続的な抗菌・防臭効果が期待できる。
キトサンの諸性能
 キトサン入り繊維には次の様な働きがあり、肌に優しく防臭にも優れる繊維製品が開発されている。
(1)四大悪臭(アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン)の吸収
(2)吸湿性
(3)アトピー性皮膚炎に対する効果
(4)抗菌性:キトサンを繊維化しているので、洗濯や摩耗によって、その成分が剥離したりすることが無く、当初の優れた効果が安定的に持続する。
(5)肌に優しい:レーヨンの、高い保湿性を生かしているので、かさつきがちなお肌にもやさしい潤いをもたらし、肌ざわりもソフトで刺激の少ない繊維である。
(6)生分解性

医薬・医療用(キチン・キトサンの主な性質と医療材料への応用)
生体適合性と生物に対する作用、主な加工性
毒性がない粉末生分解性があるぺ一スト・軟膏天然高分子化合物である溶液・ゲル傷口治癒の促進、傷跡の縮小膜止血性、浸出液の吸収繊維免疫系刺激作用、感染防止作用不織布血中コレステロール値低下作用スプレー剤
製造可能な用途
人工皮膚・人工骨包帯眼帯用コンタクトレンズ縫合糸傷口保護用粉剤、軟膏スプレー剤食物繊維
生体への適合性
 縫合糸や人工骨について多くの試験・検査が実際の医療の現場で繰り返し実施された結果、次のような優れた性質が明らかになってきた。
・これらの製品は生体内の酵素リゾチームで最終的には分解消滅する。
・生体親和性があり、生体との馴染みがよい。
・傷口の治癒促進効果があり、人工皮膚の場合は表皮形成が早く、傷痕もきれいなことが認められている。
・治療中に人工皮膚は血清タンパク質の吸着能がよく、そのため生体との馴染みがよく、また鎮痛、止血効果なども認められている。
これらの性質は既存の材料で作られた縫合糸や人工皮膚と比較した場合遜色のないことは勿論、治癒促進などの点でも優れている。
薬の効き目の調整役
 医薬品では、その速効性、持続性や局在性など、色々な特性が時と場合によって要求される。
特に副作用が強いと言われている抗がん剤・制がん剤の場合、身体組織が急激に高濃度の薬剤にふれるのではなく、薬効成分がゆっくりじわじわと、ある濃度レベルで持続されるような工夫が必要となる。
服用後ゆっくり、じわじわと薬効成分を放出するような医薬品の形態を徐放性薬剤といい、このような薬剤の適用法を徐放性薬剤送達法という。
キチンやキトサンは、薬剤に徐放性を与える成分として新しく登場してきた。

化粧品
化粧品として優れた性質を持つキトサン
 ・粘性
キトサンは酸性溶液によく溶け、適度の粘性を示す。
少量で必要な粘性が得られ、くすみのない、透明度の高い、明るいジェリーの形成が可能となり、相分離を起こさず、発泡安定性を示す。
毛髪化粧品のほか、化粧水、乳液、バスジェリー、歯磨きなどの水性べ一ス製品の増粘剤としても応用できる。
 ・保護コロイドを形成する
キトサンには、エマルジョン(注釈)やコロイド(注釈)を保護し、製品を安定化する作用がある。
キトサンは金属と結合して、キレート化合物(注釈)を形成する性質がある。
化粧品の配合成分と金属が塩を形成すると本来の作用が発揮されなくなってしまう。
その為、従来は洗剤にはポリリン酸塩が、化粧品などの場合にはEDTA(エチレンシ“アミン四酢酸)など、キレート作用を持つ物質が添加されてきた。
これに代わり、キトサンのような環境にも無害の天然物質が、キレート剤として金属イオンの封鎖に使われることは好ましいことである。
 ・保湿効果
キトサンは適度の吸湿性があり(グリセリンは40%、キトサンは約20%)、また一定の湿度を保とうとする働きがある。
キトサンの吸湿性は、他の保湿剤に比べると空気中の湿度に左右される幅が小さいので、皮膚や毛髪の水分を一定に保つ効果がある。
毛髪への適合性
 キトサンは毛髪に対し、強い吸着性を持っている。
毛髪の最外層はキューティクルと呼ぱれ、シスチン、セリンなどのアミノ酸の多いタンパク質(ケラチン)を含む多数の鱗片状細胞でできている。
このタンパク質は水にぬれると負に帯電する。
キトサンは溶液中では正に帯電するので両者を接触させると電荷は中和され、高分子複合体として強く結合する。
また分子内または分子間で水素結合という結合力が多数作用しあって互いに強固に結合する。
キトサンは毛髪とは反対の正電荷を持ち、毛髪によく吸着し、電荷を中和してその表面をコートするので、保水性とあいまって毛髪の帯電防止に役立つ。
またキトサンは、薄い皮膜を形成すると、光沢のある滑らかな触感を示す。
安全性
現在までのところ、マウス、ラット、モルモット、ヒトなどについて行われた実験結果には、キトサンが皮膚に対して悪い影響を及ぼしたというデータはない。
ただし、このような副作用の問題は、個人差が大きいものであるので、どんなに安全な製品であっても、常に一般的な注意は必要である。

(注釈)
エマルジョン: 乳濁液の事で1つの液体が別の液体の中に微粒子の形で分散しているものをいう。
コロイド: 2つ以上の相の混在したもので、一方の相(分散相)の微粒子が他方の相(分散媒)のなかに浮遊しているものと考えられている。エマルジョンは分散相と分散媒のどちらも液相であるものをいう。
キレート化合物: 金属の配位化合物において、2種以上の多座配位子が金属イオンの配位座の2つ以上を占めて配位しているものを言う。

工業用
キトサンの廃水処理剤への応用
 先進国の大都市から排出される汚水は莫大な量であり、その中に含まれる糞尿、家庭雑排水、工業排水にはかなりの濃度の有機物が含まれる。 都市排水は通常、活性汚泥と呼ぶ微生物、微小藻類、微小動物の共生塊を用いて好気的条件下で増殖させる。
その結果発生した汚泥塊を沈殿させ、上澄みの浄化された水は連続的に棄てられる。
キトサンには微生物を増殖させる働きがある。
そのことにより、汚水中の有機物の分解速度を速めることが出来る。
また、キトサンは多くの重金属イオンを捕捉するので、同時に排水中の有害性金属の除去にも役立つ。
そして何よりも、キトサンは天然の生物資源である為、環境保全の為には非常に有効な資材となる。
生分解性プラスチック
 セルロースを水に懸濁すると、その表面はアニオン性になる。
キトサンは酢酸塩などにして水に溶解すると、カチオン性(注釈)を示す。
セルロースとキトサンの親和性は良好であり、これらの性質を利用して、生分解性のプラスチックを作ることに成功している。
キトサンを使うことの利点としては、強度が上がる、生分解速度が速まる、抗菌性等が挙げられる。
ホルムアルデヒド吸着剤
新建材の溶剤に含まれるホルムアルデヒド(注釈)等が原因となり、家の中にいる人が吐き気やめまいなどを訴えるケースが増えており、シックハウス症候群と呼ばれている。
キトサンとカテキンを用いた塗布剤によって、ホルムアルデヒドの気中濃度を著しく低下させることができることが判っている。
ホルムアルデヒドの放散量基準は、JASでFco,Fc1,Fc2とランク付けされており、Fcoが一番低い基準となっている。
キトサンとカテキンを併用した吸着剤はその基準を大きく下回る結果が得られている。

(注釈)
カチオン: 陽(プラス)イオンのこと。陰(マイナス)イオンはアニオンと呼ばれる。
ホルムアルデヒド: 刺激性が強く水に溶けやすい気体である。35〜38%水溶液をホルマリンといい、主に消毒、防腐の目的で使用されている。
ホルムアルデヒドは、身近なところでは接着剤の原料として建築部材や家具などで広く使用されている合板等の木質ボード類の製造に不可欠なものとなっている。

食品添加物
物性改善としての利用
 キトサンをチーズ、マーガリン、クリーム、アイスクリームなどの乳製品に添加することにより、乳化安定性、保形性などの物性改善効果が認められている。
その他、ゼリー、ピクルス類、チルド食品における物性の改良が証明されており、これらの分野での活用も期待される。
その他キトサンには、(1)増粘効果(2)保湿効果(3)保油効果があることが知られている。
また、旨味を引き出すということも期待される。
キトサンの機能の利用
 キトサン含有食品を継続的に摂取することによって、キトサンの(1)コレステロール改善作用、(2)脂肪吸収抑制作用、(3)血圧上昇抑制作用、(4)腸内代謝改善作用などが期待できる可能性がある。
食物繊維としての利用
 キトサンの生理作用に対する有効量はO.5〜3.Og/日である。
ただ、経済性や有効性を考慮すると、1日当たり1gの摂取が可能な食品が現実的である。
食品例としては、麺類、パン、菓子、練り製品、乳製品、惣菜、スープなどがあげられる。
既に上市されている商品も少なくなく、この分野でのさらなる市場拡大が望まれるところである。
抗菌性の利用
 細菌の細胞最外層は負に荷電しているのに対して、キトサンは正に荷電している。
それゆえ、キトサンが添加されると細菌表面の荷電が中和撹乱され、結果的に生育が抑制されるものと考えられている。
ただし、初発菌の量とキトサンの量のバランスには注意が必要である。
逆に菌を増殖させてしまったり、キトサンが多すぎる場合味覚的な問題が生じたりする。
また、白菜の浅漬けの保存日数を延長することができたとの報告があるように、キトサンを用いることによって食品の鮮度を保持することが可能となると考えられる。
その他、キトサンフィルム、キトサン含有フィルムなどに加工され、食品の保存性を高める新しい包装材としての開発も期待される。

農業用
根活力を高めて栄養分の吸収を良くする
キトサンは、根活力(根の張りや根量)を増すことが出来る。
そのことによって→養分(肥料成分)の吸収が増進される→生育が旺盛になる→生長が促進(大きさ・重さ・収穫までの期間の短縮)される→収穫量が増加することなどが考えられる。
有用土壌微生物の増殖
キトサンを土壌に散布すると、キトサンを餌とする放線菌や糸状菌が増殖する可能性がある。
しかし、放線菌はキトサンに出会うとキトサン分解酵素を出す為、キトサンを細胞壁に持つ糸状菌を攻撃することになり糸状菌は増殖できなくなる。
その結果として有用菌である放線菌は増殖し、有害菌である糸状菌の増殖はおさえられる。
植物の持つ自己防衛機構
 植物は病原微生物やウイルスがその体内に侵入したり、あるいは低温や物理的障害にさらされると敏感に反応して、微生物の増殖を阻止する作用のある物質ファイトアレキシンなどの生成が誘導される。
また、微生物の細胞壁成分の一つであるキチン質を溶解する作用を持つ酵素(例えばキチナーゼ)などを生成・分泌したり、植物細胞壁の主成分セルロースと結合して組織の強度を増す性質を持つ化学成分が促進されたりする。
これらの反応は病原微生物の侵入や物理的ストレスの負荷に対して植物が反応する、いわば動物における免疫応答に相当する現象といえる。
キチン、キトサンがこの植物自己防衛発現機構の引き金(エリシター)になることが見出された。
ミネラルの吸収促進
 キトサンは、植物にとって必要な多くのミネラルの吸収を促進する働きがあり、特にモリブデンを補給すると、そのことにより、硝酸態窒素を低下させることができる。
又、日本人に不足しがちなカルシウムを強化した野菜を育てることも可能になる。
このようにキトサンのミネラル吸収効果を利用したものがネオグリーンである。
キトサンの農業用資材としての効果
・生長・発根促進効果
・有用土壌微生物の増殖効果
・耐病性増強効果
・増収効果
安全性
 キトサンに関するこれまでの研究成果から判断すれぱ、本来キトサンの安全性に問題はないといってよい。しかもキトサンは生分解性であり、いわゆる環境にやさしい素材である。